囁き
2005.07.25


行き先のわからない階段を下っている。

不安で堪らない上、歩くことを放棄した妻にも苛立つ。

もう一度殺してやろうか。

すべてを放り出して引き返そうと振り向いたその時。

『囁き』が、小鳥の囀りに似た声で行き先を告げる。

か弱いながらも確信に満ちたその答えに、俺は頷く。

そうだ、選択の余地などない。

このまま恐怖と憤怒と絶望を引き摺りながら、

階段を下っていくだけなのだ。


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